成年年齢引下げに伴う消費者被害が拡大することを防止するための実効性ある施策を早急に実現することを求める会長声明

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2021年09月15日

成年年齢引下げに伴う消費者被害が拡大することを防止するための実効性ある施策を早急に実現することを求める会長声明

 民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げる「民法の一部を改正する法律」(平成30年法律第59号。以下「本法律」という。)の施行日である2022(令和4)年4月1日まで、あとわずか半年あまりとなった。

 本法律がこのまま予定通り施行された場合、これまで未成年者取消権によって悪質商法の被害から保護・救済されてきた未成年者のうち、まだ高校生を含む18歳や19歳の若年者は未成年者取消権を行使できなくなる。

 ところで、本法律が2018(平成30)年の通常国会で成立した際、成年年齢の引下げによって若年者の消費者被害が拡大する強い懸念から、これを防止するために法施行まで3年10ヶ月という長い準備期間を設け、参議院法務委員会の全員一致による附帯決議においては、必ず実現すべき課題が示されていた。

 具体的には、①法成立後2年以内に、知識、経験、判断力の不足など消費者が合理的な判断をすることができない事情を不当に利用して勧誘し契約を締結させた場合における消費者の取消権(いわゆるつけ込み型不当勧誘取消権)を創設し、②若年者の消費者被害を防止し救済を図るために必要な法整備を行うこと、③マルチ商法等への対策について検討し必要な措置を講ずること、④消費者教育の充実を図ること、⑤18歳、19歳の若年者への周知徹底や社会的周知のための国民キャンペーン実施を検討すること、⑥施行日までに、措置の実施、効果、国民への浸透について検討し、その状況を公表すること等であった。

 しかし、本法律が成立した2018(平成30)年6月以降、若年者の消費者被害やその防止をめぐる状況は大きく変わっておらず、成年年齢引下げの施行がおよそ半年に迫った現時点においても、上記附帯決議が求める施策が十分に実施されているとは言い難い。

 特に、18歳、19歳の若年者が未成年者取消権を喪失することによる消費者被害拡大に対応する施策は急務であるが、現状では極めて不十分である。2018(平成30)年に消費者契約法が一部改正されたが、上記附帯決議が求める「つけ込み型不当勧誘取消権」の創設は、参議院法務委員会の附帯決議で明記された2年以内という期限をすでに1年以上経過しているにもかかわらず、その目途も立っていない。

 また、消費者教育についても、「アクションプログラム」、「成年年齢引下げに伴う消費者教育全力キャンペーン」等が実施されているものの、消費者被害の予防に繋がる実践的な消費者教育が十分に行われているとまでは言えず、さらに成年年齢引下げ自体の周知はされていても、未成年者取消権を18歳で失うことによる消費者被害拡大のおそれについての周知徹底も十分になされているとは言い難い。

 そのため、このままの状況で2022(令和4)年4月1日を迎えれば、18歳、19歳の若年者への消費者被害拡大という懸念が現実化することは明らかであり、施行まで3年10ヶ月もの準備期間を設けた意味もない。

 当会は、本法律成立前である平成29(2017)年12月18日に、「民法の成年年齢引下げに反対する会長声明」を発したところであるが、本法律がおよそ半年後に施行が迫っていることを踏まえ、政府に対し、成年年齢引下げによって若年者が被る影響や問題点を国民に広く周知し、上記附帯決議に示された被害防止の措置を早急に実現することを強く求める。

   2021年(令和3年)9月14日

 

                       三重弁護士会

                        会長 山 本 伊 仁