死刑執行に抗議する会長声明

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2018年01月31日

死刑執行に抗議する会長声明

 

 2017年12月19日、東京拘置所で2名に対して死刑が執行された。同年7月13日に2名の死刑執行がなされてから5か月あまりでの執行となる。第2次安倍内閣が発足した2012年12月26日以降、死刑が執行されたのは12回目であり、上記日時以降およそ5年の間に合計21名に対して死刑が執行されたことになる。


 今回死刑が執行されたうち1名は、犯行当時少年であった。犯行当時少年の死刑囚に死刑が執行されたのは、1997年8月以来であり、おおよそ20年ぶりの執行となる。また、今回の2名は、いずれも裁判所に対して再審を請求している状況において死刑が執行された。これらの点において、今回の死刑執行は、きわめて異例である。


 死刑は生命を奪う不可逆的な刑罰である。それゆえに誤判・えん罪の場合には取り返しがつかない。1980年代の著名な死刑再審4事件(免田、財田川、松山、島田)だけではなく、最近でも、袴田事件で再審開始決定が出されたことにより、誤判・えん罪による死刑執行の危険は未だ現実に存在し、決して過去のものではないことをあらためて認識することになった。死刑制度に対してどのような立場に立つとしても、誤判・えん罪による死刑執行を決して許してはならないことについては、異論をみるところではない。


 日本弁護士連合会は、死刑制度を存続させれば誤判・えん罪による死刑執行を避けることができないこと等を理由に、2016年10月7日に開催された第59回人権擁護大会において、日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであるとする宣言を採択した。


 国際社会においても死刑廃止に向かう潮流が主流であり、世界約200の国の中で法律上の死刑廃止国及び10年以上死刑を執行していない事実上の死刑廃止国は141か国に及び、死刑存置国は57か国にとどまる。その中でも、2016年に実際に死刑を執行した国は、日本を含め23か国のみである。さらに、OECD加盟国に限ってみれば、死刑制度を存置しているのは日本・韓国・米国の3か国のみに限られるが、このうち韓国は事実上の死刑廃止国であって、米国でも死刑を廃止する州が増加しており、日本の状況は国際的にみても特異であるといわざるを得ない。このような国際的な状況において、国連の自由権規約委員会、拷問禁止委員会、及び人権理事会は、日本政府に対し、死刑の執行を停止し、死刑の廃止を検討すべきであるとの勧告を繰り返し行っている。


 翻って我が国の世論調査をみれば、2014年11月に実施された死刑制度に関する政府の世論調査の結果、「死刑もやむを得ない」との回答は80.3%であった。しかしながら、そのうち40.5%は「状況が変われば、将来的には、死刑を廃止してもよい」と回答しているところであり、また仮釈放のない終身刑が導入されるならば、「死刑を廃止する方がよい」との回答も37.7%に上っているところであって、国民世論においても将来的にも死刑制度の存続を絶対とする考え方ばかりではないことが示唆されている。


 無論、突然に不条理な犯罪の被害にあい、大切な人を奪われた状況において、被害者のご遺族が厳罰を望むことはごく自然な心情である。しかしながら、我が国においては、犯罪被害者及び被害者ご遺族に対する精神的・経済的・社会的支援が貧弱であることも、被害者ご遺族そして国民世論における処罰感情を高める要因の一つとなっていることはあらためて指摘されなければならない。また、近代的刑事司法制度における刑罰の目的は応報ばかりではなく、国家の刑事政策としての国民の安心・安全の確保、及び国民の基本的人権の尊重の観点から検討されなければならず、死刑制度の存廃についても、かかる観点からの総合的な政策判断が必要とされている。


 先に述べた通り、死刑は生命を奪う点において不可逆的な刑罰であり、誤判・えん罪の場合には取り返しがつかない。そして、誤判・えん罪を避けるためには、再審請求を含め、十分な弁護権・防御権が保障されなければならない。殊に、自ら選ぶことのできない成育環境の影響が大きいと考えられる少年の犯罪について、少年にすべての責任を負わせて死刑にすることについては、格段の慎重さが必要であり、その場合の弁護権・防御権の保障が殊更に重要であることは言を俟たない。


 よって、当会は、犯行当時少年であった者を含む、再審を請求している2名に対する今回の死刑執行に対し、厳重に抗議するとともに、政府に対し、死刑の執行を直ちに停止し、死刑制度の廃止に向けた総合的な政策の検討を迅速に進めることを強く求めるものである。

 

   平成30(2018)年1月30日

 

三重弁護士会           

会長 飯 田   聡