民法の成年年齢引下げに反対する会長声明

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2017年12月19日

民法の成年年齢引下げに反対する会長声明

1 選挙年齢を20歳以上から18歳以上に引き下げる公職選挙法等の一部を改正する法律が平成28年6月19日から施行されたことを受け,現在,民法の成年年齢を20歳から18歳まで引き下げることが議論されている。しかしながら,同引下げにより,18歳,19歳の若年者に対する消費者被害を拡大するおそれが高いことから,当会は,現時点において,民法の成年年齢を18歳に引き下げることに反対する。


2 民法の成年年齢を引き下げた場合における最も大きな影響は,18歳,19歳の若年者が,未成年者取消権(民法5条2項)を喪失することである。 
 民法では,これら若年者を含む未成年者は,単独で行った法律行為を未成年者であることのみを理由として取り消すことができ,未成年者が悪質な業者との間で違法もしくは不当な契約を締結させられた場合の救済手段として大きな効果を有している。また,20歳を境に若年者の消費生活センター等への消費者相談件数が増加するという傾向が顕著に見られることから,未成年者取消権が未成年者に違法もしくは不当な契約の締結を勧誘する悪質な事業者に対する抑止力としても機能している。したがって,18歳,19歳の若年者が未成年者取消権を失えば,消費者被害に巻き込まれる可能性が高まることは確実であって,民法の成年年齢引下げは若年者への消費者被害の増加につながる大きな危険を有している。

 

3 また,若年者に対する消費者被害増加を防止するためには,若年者または消費者全般を保護するための法改正や,より一層の消費者教育の拡充が重要である。しかし,我が国では,現時点で,そのような施策の実施は十分であるとはいえず,若年者の消費者被害の実態に対する理解も十分とは言えない。
 なお,平成29年8月8日付け,消費者委員会答申書(府消委第196号)においては,付言事項として「合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させるいわゆる『つけ込み型』勧誘の類型につき,特に,高齢者・若年成人・障害者等の知識・経験・判断力の不足を不当に利用し過大な不利益をもたらす契約の勧誘が行われた場合における消費者の取消権」について,早急に検討し明らかにすべき喫緊の課題とされているところである。

 

4 このように,民法成年年齢の引下げにあたっては,引下げによる影響や問題点を広く把握し,若年者と若年者を取り巻く多くの関係者らの意見を十分に聴いた上で,さまざまな角度から議論がなされる必要があるにもかかわらず,現状では,十分に国民的な議論がなされている状況とは到底言えない。
 よって,当会は,現時点において民法の成年年齢を18歳に引き下げることに反対する。
                                       以 上

   平成29(2017)年12月18日

 

三重弁護士会           

会長 飯 田   聡