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2016年12月09日
死刑執行に抗議する会長声明
平成28年11月11日,福岡拘置所において,1名に対して死刑が執行された。本年3月25日に2名の死刑執行がなされてから7か月あまりでの執行となる。第2次安倍内閣の成立以降約4年の間に死刑執行は10回目で,合計17名に対し,死刑が執行されたことになる。
日本弁護士連合会は,本年10月7日に開催された第59回人権擁護大会において,日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される平成32年までに死刑制度の廃止を目指すべきであるなどとした宣言を採択したばかりであり,今回の死刑執行は,この宣言に対し全く配慮しないもので誠に遺憾である。
死刑は生命を奪う不可逆的な刑罰であり,誤判の場合には取り返しがつかない。昭和55年から昭和62年にかけての著名な死刑再審4事件(免田,財田川,松山,島田)だけでなく,最近でも,平成26年に袴田事件で再審開始決定が出され,袴田巌氏の死刑及び拘置の執行は停止されたが,誤判・えん罪による死刑執行の危険は現実のものとなっている。
国際社会においても,死刑廃止に向かう潮流が主流であり,死刑を廃止又は停止している国は141か国に及び,世界の3分の2以上の国において死刑の執行はなされていない。さらに,平成27年に実際に死刑を執行した国は25か国しかなかった。また,平成26年7月23日には,国連人権(自由権)規約委員会が日本政府に対し,「死刑の廃止を十分に考慮すること」との勧告を行っている。
内閣府が平成26年11月に実施した世論調査で,「死刑もやむを得ない」という回答が80.3%と多数を占めているものの,そのうち「状況が変われば廃止」が40.5%であり,また「終身刑導入なら廃止」も全回答者の37.7%に上り,死刑についての情報が十分に与えられ,死刑の代替刑も加味すれば,死刑廃止が必ずしも国民世論の少数となるとは限らない。また,死刑廃止は世論だけで決めるべき問題ではなく,世界の死刑廃止国の多くも,誤判による死刑執行は決して許してはならない,犯罪者といえども生命を奪うことは人権尊重の観点から許されない等との決意から,死刑支持の世論が多数の中でも,死刑制度が廃止されるに至っている。
当会は,今回の死刑執行に抗議するとともに,政府に対し,日弁連人権擁護大会の宣言及び国連人権(自由権)規約委員会の勧告に誠実に対応し,一旦すべての死刑判決確定事件の死刑の執行を停止したうえで,死刑制度の廃止についての検討を開始するよう求める。
2016年12月9日
三重弁護士会
会長 内田 典夫