「カジノ解禁推進法案」に反対する会長声明

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2016年11月14日

「カジノ解禁推進法案」に反対する会長声明

 先般,超党派の「国際観光産業振興議員連盟」において,過去,廃案になった,カジノを中心とする統合型リゾートを推進する法案(以下「カジノ解禁推進法案」という。)について,改めて,今国会(第192回臨時国会)で成立を目指す方針が確認された旨報道された。

 カジノ解禁推進法案は,現行法上,賭博罪に該当する行為として違法とされるカジノを合法化し,民間賭博を解禁しようとするものであるが,現在においても深刻なギャンブル依存症の問題を,更に悪化させるおそれが大きい。厚生労働省研究班の調査によれば,我が国でギャンブル依存症の疑いのある者は536万人,成人人口の4.8%と推計されており,1%前後である諸外国と比較して際立って高い。ギャンブル依存症は,ギャンブルを繰り返すことによって誰でも罹患しうる精神疾患とされているにもかかわらず,社会的理解は乏しく,我が国では,ギャンブル依存症は自己責任の問題とされている。また,ギャンブル依存症が原因で,破産や離婚に至ったり,窃盗や横領などの罪を犯したり,自殺に追い込まれたりする事例も少なくないにもかかわらず,我が国では,ギャンブル依存症対策が十分取られていない。

 また,法案は,カジノ施設と会議場施設,レクリエーション施設,展示施設,宿泊施設等が一体となった「特定複合観光施設」を設置するもので,家族で出かける施設にカジノ施設が存在することとなる。青少年は,幼少時からカジノ施設に接することで賭博を抵抗なく受け入れることとなりかねず,その健全育成に悪影響を及ぼすことが強く懸念される。

 さらには,暴力団等の反社会的勢力の関与・介入,マネー・ロンダリングへの利用,犯罪の発生,風俗環境の悪化等も予想されるにもかかわらず,これらに対する具体的で有効な予防策は示されていない。

 カジノには,こうした多くの弊害が避けられないにもかかわらず,我が国ではギャンブル依存症を始めとする弊害に対する対策がほとんど皆無の状況にあり,こうした現状においては,弊害を一層増加・深刻化させるおそれのあるカジノ解禁推進法案に対しては,当会は強く反対する。


2016年11月14日
三重弁護士会
会長 内田 典夫