事前拒否者に対する訪問及び電話による取引の勧誘を
禁止する制度の導入を求める意見書

三重弁護士会 >  総会決議・会長声明

2015年09月24日

事前拒否者に対する訪問及び電話による取引の勧誘を
禁止する制度の導入を求める意見書

 現在、内閣府消費者委員会特定商取引法専門調査会において、特定商取引に関する法律(以下「特商法」という。)の見直しに関する議論が進められており、本年8月、その中間整理が公表された。当該中間整理においては、訪問販売及び電話勧誘販売に対する新たな勧誘規制を導入することの可否及びその内容が重要な論点の1つとなっている。

 消費者からの事前の要請なしに行われる訪問や電話による取引の勧誘(いわゆる不招請勧誘)は、それ自体、消費者にとって迷惑であるとの声も多い。また、訪問や電話による不招請勧誘は、不意打ち的かつ一方的な勧誘になりがちであり、そのために、消費者が不本意な契約を締結させられることも少なくない。このことは、自宅にいる機会が多い高齢者について特に顕著である。

 現行の特商法は、訪問販売及び電話勧誘販売について、契約を締結しない意思を表示した者に対する再勧誘禁止の規定を置いている(特商法3条の2第2項)。しかし、事業者の巧みな勧誘が始まってしまうと消費者がこれを断ることは難しいのが実情であり、特に高齢者等については、そもそも拒絶意思を明確に表示することが困難な者も存在する。国民生活センターの消費生活年報(2014(平成26)年版)によれば、訪問販売及び電話勧誘販売に関する相談件数は少なくとも2009(平成21)年以降増加の一途を辿っており、その中には、強引な勧誘や長時間にわたる勧誘に関する相談件数も相当数含まれている。また、勧誘の際に消費者が契約を締結しない意思を表示したことを後から立証することは容易ではなく、かかる再勧誘禁止の規定だけでは消費者保護にとって十分であるとはいえない。

 このような訪問や電話による不招請勧誘の問題を解決するためには、訪問や電話による勧誘を受けることを拒否する意思表示を事前にした者に対する勧誘をそもそも禁止する制度を導入すべきである。具体的には、Do Not Knock制度(訪問勧誘を受けたくない者が、戸口等に「訪問販売お断りステッカー」を貼るなどして勧誘を拒否する表示をし、その表示のあった住居等への勧誘を禁止する制度)やDo Not Call制度(電話勧誘を受けたくない者がその電話番号の登録を行い、これをリスト化し、登録された番号への電話勧誘を法的に禁止する制度)を導入し、訪問販売業者及び電話勧誘販売業者がこれらの制度による禁止行為に違反した勧誘を行って契約を締結した場合には、当該業者に行政処分や罰則を適用するほか、規制の実効性を確保するために、消費者が当該契約の取消しまたは解除をすることができるようにすべきである。

 なお、このようなDo Not Knock制度やDo Not Call制度を導入することに対しては、事業者の営業の自由を侵害するとの懸念もある。しかし、事業者の営業の自由も、消費者の私生活上の平穏や自己決定権の下では一定の制約を受けるものというべきである。また、上記各制度は、あらかじめ拒絶の意思を表示した消費者に対する訪問や電話による勧誘のみを禁止するものであり、他の方法による営業活動(消費者から承諾を得て行う勧誘、勧誘を拒絶しない者に対する勧誘、訪問・電話以外の方法による勧誘)を何ら規制するものではない。このように、Do Not Knock制度やDo Not Call制度は、事業者の営業の自由を過度に侵害するものではない。

 以上のとおり、当会は、訪問販売及び電話勧誘販売についてDo Not Knock制度やDo Not Call制度のような事前拒否者に対する勧誘を禁止する制度を導入することを強く求める。


2015年9月24日
三重弁護士会
会長 川端 康成