憲法違反の安全保障法制改定法案に反対し、廃案を求める会長声明

三重弁護士会 >  総会決議・会長声明

2015年07月15日

憲法違反の安全保障法制改定法案に反対し、廃案を求める会長声明

 2015年(平成27年)5月14日、政府は、いわゆる安全保障法制改定法案、すなわち、自衛隊法、武力攻撃事態法、周辺事態法、国連平和維持活動協力法等の関連10法案を一括して一部改正する「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律」(平和安全法制整備法案)及び新規立法である「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律」(国際平和支援法案)(以下併せて「本法案」という。)を閣議決定し、5月15日、第189回通常国会に本法案を提出した。7月15日、本法案は、衆議院平和安全法制特別委員会にて国民の十分な理解を得られないまま強行的に可決された。

 本法案は、従前の政府の憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認した2014年(平成26年)7月1日の閣議決定を具体化した内容を含むとともに、2015年(平成27年)4月27日に国内法制に先行して見直しが合意された「日米防衛協力のための指針」を法制化した内容となっている。

 しかし、当会が2014年(平成26年)5月14日付「集団的自衛権の行使容認に反対する会長声明」でも指摘しているとおり、憲法9条下では集団的自衛権の行使は許されないというのが確立された政府解釈であったにもかかわらず、集団的自衛権の行使を容認する昨年7月の閣議決定及び本法案は、憲法前文及び憲法第9条を憲法改正手続によることなく改変するものであり、立憲主義に明らかに反するものである。
 加えて、本法案は、憲法9条下では認められない集団的自衛権の行使を容認することはもとより、以下の問題点からも、憲法に違反するものといわざるをえない。

 本法案は、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」を「存立危機事態」と称し、この場合に、地理的な限定なくして他国軍隊とともに武力を行使することを可能としている。しかし、「存立危機事態」とは抽象的で不明確であり、時の政府によって濫用されるおそれが否定できず、国会の事前承認についても特定秘密保護法施行下、緊急時の例外も認められており、歯止めとして機能するか否かは甚だ疑問であり、武力行使を容認する場面が際限なく広がっていくおそれは極めて大きいといわざるをえない。
 次に、我が国の平和と安全に重要な影響を与える「重要影響事態」や、国際社会の平和と安全を脅かす「国際平和共同対処事態」において、現に戦闘行為が行われている現場でなければ、地理的限定なくどこででも、自衛隊が戦争を行っている他国軍隊に対し、弾薬の提供や兵員の輸送、戦闘機等への給油・整備等の支援活動を行うことを可能としている。兵站は戦争に不可欠なのであるから、これでは他国との武力行使の一体化は避けられず、憲法9条1項により日本国民が「永久にこれを放棄した」はずの「武力の行使」に道を開くものである。
 さらに、これまでの国連平和維持活動(PKO)のほかに、国連が統括しない有志連合等の「国際連携平和安全活動」にまで業務範囲を拡大し、従来PKOにおいてその危険性故に禁止されてきた安全確保業務や「駆け付け警護」を行うこと、及びそれに伴う任務遂行のための武器使用を認めている。しかし、この武器使用は、自己保存のための限度を超えて、相手の妨害を排除するためのものであり、自衛隊員を自ら殺傷し、殺傷される現実の危険にさらし、さらには偶発的な衝突などの戦闘行為から武力の行使に発展する道を開くものである。これらに加え、本法案は、武力攻撃に至らない侵害への対処として、新たに他国軍隊の武器等の防護を自衛官の権限として認めている。これは、現場の判断により戦闘行為に発展しかねない危険性を飛躍的に高めるものである。

 以上のとおり、本法案は、憲法第9条に反し違憲である。上述のとおり、当会は、2014年(平成26年)5月14日付「集団的自衛権の行使容認に反対する会長声明」において、憲法解釈の変更による集団的自衛権行使容認に対し、反対の意思を表明した。衆議院憲法審査会において与党推薦を含む憲法学者でもある参考人全員が集団的自衛権の行使を容認する本法案は違憲であるとの意見を表明し、2015年(平成27年)6月16日には都道府県で初めて三重県議会において「安全保障法制の慎重な審議を求める意見書」が可決され、県内市町議会でも法案廃止や国民に対する丁寧な説明、慎重審議を求める意見書等が可決されている。それにもかかわらず、政府・与党は、戦後最長となる95日間にも及ぶ会期延長をし、あくまで今会期での成立を目指している。

 当会は、「基本的人権の擁護と社会正義の実現」を使命とする法律家の団体として、憲法の諸原理を尊重する立場から、憲法違反の本法案に強く反対するとともに廃案とするよう求める。


2015年7月15日
三重弁護士会
会長 川端 康成