商品先物取引法施行規則による不招請勧誘禁止規制の緩和に反対する会長声明

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2015年03月12日

商品先物取引法施行規則による不招請勧誘禁止規制の緩和に反対する会長声明

 経済産業省及び農林水産省は,2015(平成27)年1月23日,商品先物取引法施行規則の一部を改正する省令(以下「本省令」という。)を定めた。本省令は,消費者がハイリスク取引の経験者である場合や,消費者が65歳未満で一定の年収または資産を有する者であって,業者が当該消費者の理解度を確認した場合等を不招請勧誘禁止規制の例外とするものである。また,本省令は,実質的には当該消費者に対する不招請勧誘を認めることを内容とするものであって,商品先物取引法(以下「法」という。)214条9号が規定する不招請勧誘禁止規制を緩和するものである。

 そもそも,商品先物取引は,その仕組みが複雑で消費者に理解し難く,かつ,リスクの高い取引である。そのため,悪質な業者が突然の電話や訪問による勧誘によって商品先物取引の知識や経験に乏しい消費者を取引に引きずり込み,深刻な被害を与えてきた。法による不招請勧誘禁止規制は,そのような事実等を踏まえ,商品先物取引による消費者被害を未然に防止するという観点から,2011(平成23)年1月に施行されたものである。その後,商品先物取引に関する相談件数は減少傾向にあるものの,未だ相当数の相談が寄せられているところであり,被害の根絶にはなお至っていない。

 本省令は,不招請勧誘禁止規制の例外を認めるに当たり,ハイリスク取引の経験の有無や自己の年収及び資産等を記載する書面を消費者に提出させたり,書面等による問題に回答させて当該消費者の理解度を確認することとしている。しかし,仮にそのような措置を講じたとしても,業者が消費者を誘導して事実と異なる申告をさせたり,正答を教授するなどの不正行為を行うことは十分に考えられるところである。したがって,このような方法が消費者保護のために有効に機能するとは到底考えられない。 また,法214条9号は,商品先物取引法施行令30条で定められたリスクの高い商品取引契約に対し,そのハイリスク性ゆえに,定型的に不招請勧誘を禁止するものであると解される。しかし,本省令は,法より下位の法形式であるにもかかわらず,法の禁止する不招請勧誘を実質的に解禁した上で,より緩やかな規制(年齢・資産等の確認)でこれと置き換えているものであり,法の委任の範囲を超えた違法・無効なものであると言わざるを得ない。本省令は,「商品市場における取引等の受託等における委託者等の保護に資する」という法の目的をも骨抜きにするものであって,当該目的を達すべき監督官庁の立場と相容れない。

 当会は,2013(平成25)年9月及び2014(平成26)年4月の2度にわたり,不招請勧誘禁止規制は維持されるべきであるとの会長声明を公表してきたところであるが,消費者保護の観点から,不招請勧誘禁止規制を緩和する本省令に改めて強く反対する。


2015年3月11日
三重弁護士会
会長 板垣 謙太郎