改正貸金業法の見直しの動きに反対する会長声明

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2012年07月27日

改正貸金業法の見直しの動きに反対する会長声明

 2006年(平成18年)12月に成立した改正貸金業法は,2010年(平成22年)6月18日に完全施行され,今年で2年が経過した。改正貸金業法は,出資法の上限金利の引下げ及び収入の3分の1以上の貸付の禁止(総量規制)等を柱とし,消費者金融業者(サラ金)等による高利,過剰与信,過酷な取立て等によって深刻な社会問題となっていた多重債務問題を解消するために成立したものである。

 その結果,無担保無保証借入残高が5件以上ある人は,改正貸金業法施行時点で約107万人であったのが,2012年(平成24年)5月現在で約40万人に激減し,多重債務を理由とする自殺者も,2007年(平成19年)時点で年間1973人であったのが,2011年(平成23年)には年間998人に半減した。このように,改正貸金業法の施行は,多重債務対策として着実な成果を上げている。

 当会も,2009年(平成21年)9月に「改正貸金業法の完全施行を求める声明」を公表し,当時未施行であった改正貸金業法を早期に施行するよう求めるとともに,多重債務に関する無料法律相談を実施し,地方自治体等との連携も強化するなど,多重債務問題の解消に向けた活動を行ってきた。

 ところが,一部の国会議員からは,正規の貸金業者から借りられない人がヤミ金から借り入れざるを得なくなり,潜在的なヤミ金被害が広がっている,零細な中小企業の短期融資の需要があるなどとして,上限金利を引き上げ,総量規制を見直すべきとの議論が起こっている。

 しかしながら,ヤミ金については,相談件数も警察の検挙数も減っており,被害規模も小型化するなど,ヤミ金被害が広がっている根拠はない。近年,貧困層が拡大していることなどに鑑みると,正規の業者から借りられない人に関しては,簡単に借りられるようにするのではなく,高利に頼らなくても生活できるセーフティネットの再構築や相談体制の更なる拡充を図るべきである。また,中小企業に対しても,短期高利の資金を提供するのではなく,更なる総合的な経営支援策を実施すべきである。このように,上限金利の引上げや総量規制の見直しは,資金繰りに苦しむ人や中小企業にとって真の解決策になるとは考え難く,多重債務者を増加させる危険性を孕んでいる。

 したがって,当会は,改正貸金業法の成果を無にさせかねない金利規制,総量規制の緩和に強く反対する。

以 上

2012年7月26日
三重弁護士会
会長 村瀬 勝彦