個人通報制度の早期導入及び国内人権機関の設置を求める総会決議

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2012年02月10日

個人通報制度の早期導入及び国内人権機関の設置を求める総会決議

決議事項
 当会は,政府及び国会に対し,国際人権(自由権)規約をはじめとした各人権条約に基づく個人通報制度を速やかに導入すること及び政府から独立した国内人権機関の設置を強く求める。
 以上のとおり決議する。

決議理由
1. 個人通報制度について
 個人通報制度とは,人権条約の人権保障条項に規定された人権が侵害されているにも拘らず,国内での救済手段を尽くしてもなお救済されない場合,被害者個人などがその人権条約の定める国際機関(委員会)に通報しその委員会の見解(Views)を得て,締約国政府や国会がこれを受けて国内での立法,行政措置などを実施することにより,個人の権利の救済を図ろうとする制度である。

 この個人通報制度を導入するには,各条約の人権保障条項について個人通報制度を定めている選択議定書等を批准するなどの手続が必要であることころ,政府は,これらの手続きをとっておらず,個人通報制度は未だ日本に導入されていない。OECD(経済協力開発機構)加盟30か国,G8サミット参加国のうち,何らの個人通報制度を持たない国は,日本だけである。政府は,すでに国際人権(自由権)規約委員会からは1993年,1998 年及び2008年と3回も第1選択議定書の批准を勧告され,女性差別撤廃委員会,人権理事会等から個人通報制度の受け入れを繰り返し勧告されている。

 日本の裁判所は,人権保障条項の適用について積極的とはいえないうえ,民事訴訟法の定める上告の理由には国際条約違反が含まれず,国際人権基準の国内実施が極めて不十分となっている。したがって,個人通報制度が導入された場合,被害者個人が各人権条約上の委員会に直接通報を行うことが可能となるばかりでなく,裁判所もより積極的に国際的な条約解釈に取り組み,適正な憲法解釈や法解釈が展開されることが期待できる。それにより具体的な事案における行政府や立法府による改善を促す契機にもなり,結果的に日本の人権保障水準を国際水準に近づけることとなる。

 そこで,当会は,政府及び国会に対し,個人通報制度を速やかに導入するよう強く求めるものである。

2. 国内人権機関の設置について
 国連決議及び人権諸条約機関は,国際人権条約及び憲法などで保障される人権が侵害され,その回復が求められる場合には,司法手続よりも簡便で迅速な救済を図ることができる国内人権機関を設置するよう求めており,多数の国が既にこれを設けている。

 国内人権機関を設置する場合,1993年12月の国連総会決議「国内人権機関の地位に関する原則」(いわゆる「パリ原則」)に沿ったものである必要がある。具体的には,法律に基づいて設置されること,権限行使の独立性が保障されていること,委員及び職員の人事並びに財政等においても独立性を保障されていること,調査権限及び政策提言機能を持つことが必要とされている。

 国連人権諸機関や人権諸条約機関からは,日本に対し,早期にパリ原則に合致した国内人権機関を設置すべきとの勧告がなされており,また,国内の人権NGOからも国内人権機関設置の要望が高まっている。
 現在,日本には法務省人権擁護局の人権擁護委員制度があるが,独立性等の点に問題があり,同制度が,パリ原則の求める国内人権機関の要件を充たさないことは明白となっている。

このような状況の中で,日本弁護士連合会は,2008年11月18日,パリ原則を基準とした「日弁連の提案する国内人権機関の制度要綱」を発表した。

 さらに,2010年6月22日には,法務省政務三役が「新たな人権救済機関の設置に関する中間報告」において,パリ原則に則った国内人権機関の設置に向けた検討を発表するなど,国内人権機関設置に向けた機運は高まってきている。

 そこで,当会は,政府及び国会に対し,日本における人権保障を推進し,また国際人権基準を日本において完全実施するための人権保障システムを確立するため,パリ原則に合致した真に政府から独立した国内人権機関を速やかに設置することを強く求めるものである。


2012年2月10日
三重弁護士会