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2011年02月10日
全面的国選付添人制度の実現を求める総会決議
少年事件における弁護士付添人は,少年審判手続において,非行事実の認定や保護処分の判断が適正に行われるよう,少年の立場から手続に関与し,事案に応じて非行事実を争い,または,少年を取り巻く環境を整備し,少年自身の内省を深めるなど,少年の立ち直りを支援する活動を行っている。少年事件において,少年の法的援助,更生支援を行う,かかる弁護士付添人の存在は極めて重要である。
しかし,現行の少年法22条の3で規定されている国選付添人選任制度は,必要的国選付添人対象事件を検察官関与事件に限定し,家庭裁判所の裁量によってしか選任されない事件についても,殺人などの一定の重大事件に限定している。
2008年の全国統計によれば,弁護士付添人が選任された事件は,少年審判に付された事件の約8.5%,少年鑑別所に身柄を拘束された事件の約39.9%に過ぎず,しかも,そのうち国選付添人が選任された事件はわずか4%弱にとどまっている。一方で,成人の刑事裁判手続においては,約98.7%の被告人に弁護人が選任されていることと比較しても,少年審判手続における弁護士付添人選任率は極めて低く,少年の権利擁護が不十分な現状にあることは明らかである。
このような状況の中,日本弁護士連合会は,弁護士付添人の重要性に鑑み,現在,全ての弁護士会員が拠出する特別会費を財源とする少年保護事件付添援助制度を実施し,国選付添人制度の対象とならない事件の少年や保護者に対し弁護士費用を援助しているところである。そして,当会も,少年鑑別所に収容された少年や保護者からの要請を受けて,弁護士を無料で派遣する当番付添人制度を実施してきた。
しかしながら,本来,弁護士付添人の関与により,少年の冤罪を防止し,適正な手続の中で適正な保護処分に付すること,そして,少年法の理念である「少年の健全な育成を期」する制度の設置は,国の責務である。わが国が批准している子どもの権利条約第37条においても,「自由を奪われたすべての児童は,弁護人…と速やかに接触する権利を有」すると規定されている。
そこで,当会は,国に対し,速やかに少年法を改正し,少年が家庭裁判所へ送致され,観護措置決定を受けて身柄拘束されている全ての事件について,国選付添人を選任される制度,すなわち全面的国選付添人制度を実現することを求めるものである。
以上のとおり決議する。
2010年2月10日
三重弁護士会