三重弁護士会 > 総会決議・会長声明
2009年09月10日
改正貸金業法の完全実施を求める声明
当会は,平成18年12月に成立した改正貸金業法,改正出資法のうち現在未実施の消費者金融の金利引下げと貸出し規制を柱とする新法規を早期に施行するよう強く求める。
改正貸金業法は多重債務問題を抜本的に解決するため,消費者金融業者の貸付け限度額を年収の3分の1までとする融資抑制策を講じ,改正出資法は処罰上限金利を現行の年利29.2%から利息制限法の上限利率である年利20%まで引き下げ,刑罰法規である出資法と民事法規である利息制限法の金利規制をほぼ一致させる大改正が行われた。新法はその他にも,ヤミ金融への罰則の強化,多重債務問題への国を挙げての取り組み,取立て規制の強化,貸金業務取扱主任者制度や債務者の負債状況を管理する指定信用情報機関の創設,消費者金融業者の財政基盤の強化等の注目すべき改革がなされたが,これらの改正規定は順次段階的に実施されてきた。
ところが,今時改正の一番の強力な施策である上記の金利引下げと貸出しの総量規制は本年末までに施行されることによって改正貸金業法が完全実施される予定であるにも関わらず,一部業界から完全実施を見合わせようとする動きが出ている。消費者金融の成約率が低下しており,借りたい人が借りられなくなっている,特に昨今の経済危機や一部商工ローン業者の倒産などにより,資金調達が制限された中小企業者の倒産が増加していることなどを挙げている。
しかしながら,多重債務問題を引き起こしてきた元凶は高金利と過剰融資にあることは従来から指摘されてきたことであり,それ故にこそ過去出資法上の処罰上限金利が幾たびか引き下げられてきたのであり,金利引下げと強力な融資規制は多重債務問題の抜本的解決に欠かすことはできない。我が国の年間自殺者数が11年連続3万人を超え,自殺動機の2番目が経済,生活を苦にしたものであることを考えると,改正貸金業法の完全実施は一刻の猶予も許すことができない。規制強化に伴う懸念は現在整備されつつあるセーフティーネット貸付けの更なる充実や相談窓口の強化を柱とする多重債務問題改善プログラムの継続によって払拭するのが筋であり,規制緩和策は本末転倒という他ない。
多重債務問題が一番最初に社会問題化したのは昭和53年である。高金利,過剰融資,過酷な取立てはサラ金3悪と呼ばれた。それから30年経過したが,その間法改正が度々行われても未だに解決を見なかった。しかし,今回の改正貸金業法はそれまでの弥縫策的な改正とは異なる大改革である。他の先進国でも例を見ない多重債務問題を収束させるためにも最後の決断を躊躇すべきではない。
よって,上記のとおり声明する。
2009年9月10日
三重弁護士会
会長 森川 仁