強い権限を持った消費者庁の設置と消費者行政一元化を求める声明

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2009年01月15日

強い権限を持った消費者庁の設置と消費者行政一元化を求める声明

 三重弁護士会は、真の消費者保護を実現するため、消費者行政の一元化を求めると共に、設置が予定されている消費者庁は、強い権限を有したものとすることを求める。

 ここ数年間の間に、消費者の生活の安全、安心を揺るがす消費者被害が続出する事態が後を絶たない状況にあり、国民の社会不安を生んでいる。当地三重県の赤福や、食肉、鰻、タケノコなどの食品の表示偽装・不正表示は、消費者の食に対する安心を揺るがし、石油温風器や湯沸かし器などによる製品事故、耐震構造偽装は消費者に対する安心を揺るがすものである。それだけでなく、商品先物取引や、投資取引では、専門的知識を有することが少ない高齢者を中心に被害事例が多発しており、更に高金利・過剰融資による消費者金融やクレジットの利用による多重債務被害は、消費者の経済的基盤を崩壊させ、最低限度の生活さえも送ることが出来ない消費者を生んでいる。

 当会においても、多重債務相談の無料化や多重債務者対策協議会を通じて地方公共団体との連携、地方の消費生活センターへの定期的な相談員の派遣などを通じ、消費者被害に対する対応、救済を行ってきた。しかし、個々の事案を救済するだけでは、消費者被害を抜本的に解決することは出来ず、社会不安を払拭することは出来ない。社会不安を除去し、真に消費者の権利を実現するためには、国の施策によらなければならない。
 これら消費者被害が多発している背景には、従来の産業・業界別の縦割り行政のため、情報が一元的に管理されないため、情報の調査・分析・共有がなされず、更に各官庁の管轄の細分化のため、被害に対する迅速で適切な対応ができないとの理由がある。
 また、消費者被害が生じた場合に、その相談を総合的に受け付ける相談窓口が充実しなければ、消費者に対応をすることが出来ず、消費者の不安を早期に取り除くことが出来ない。現在、各地方の消費生活センターが消費者からの相談を受け付けているが、地方の消費者行政の予算・人員は削減傾向にあり、相談員の待遇も十分ではないとの問題点が指摘されている。消費者の利益擁護のためには、地域に密着した消費者行政の充実が必要不可欠である。

 消費者庁設置については、平成21年1月に消費者庁関連法案等を審議する消費者問題特別委員会が衆議院で設置されたが、当会としては、以下のような権限・機能を有する新組織、制度の早期実現を強く求めるものである。

1. 消費者庁は、消費者政策の企画・立案・推進を行うとともに、監督官庁に対し規制権限行使を促す勧告権限を有し、事業者に対する直接的な規制権限を行使することが出来るものとすること。
 また、消費者庁の活動を監視する消費者参加型の第三者組織を設置し、消費者庁の活動の適正化を図ること。
2. 消費者庁は、消費者から総合的に相談を受け付けられる体制を有し、苦情処理および紛争解決を行う機能を持つようにするとともに、地方消費生活センターとの連携をとり、情報を共有化できるようにすること。また、地方消費生活センターの相談員に対する教育などの支援を行い、消費生活相談員の待遇を向上させること。
3. 消費者庁は、製品事故だけでなく取引被害に関する消費者被害情報を一元的に集約し、調査分析の上、被害拡大防止のために速やかに公表できるようにすること。また、事業者には被害の通知義務を課し、消費者庁に情報が集約できる制度を創設すること。
4. 消費者被害によって違法に収益を得た事業者に対し、被害を受けた消費者全体のためにその収益を剥奪し、被害者へ分配するための新たな制度を創設し、その実施権限を消費者庁に与えること。
5. 消費者庁の主導により消費者、特に未成年者に対する啓蒙・教育を充実させ、また、消費者庁は消費者団体に対する情報提供・連携により消費者が消費者被害の救済に主体的に参加することが出来るようにすること。

上記の通り声明する。


2009年1月14日
三重弁護士会
会長 室木 徹亮