「共謀罪」法案の抜本的見直しを要請する会長声明

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2005年12月07日

「共謀罪」法案の抜本的見直しを要請する会長声明

 「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」(以下法案という)は,163回特別国会が終了し、衆議院において継続審議となりましたが、今般の衆議院選挙で与党が大勝したのを背景に,次期通常国会で極めて短期間の審理で今にも成立されようとしています。
 この法案は,もともと「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」(以下「国連条約」という)に基づき国内法化を図るものとして2003年の通常国会から審議されてきたものですが,いわゆる「共謀罪」の新設を含むことから,日弁連が強く反対してきました。
 法案に盛り込まれた「共謀罪」は,長期4年以上の刑を定める犯罪について,「団体の活動として」「当該行為を実行するための組織により行われるもの」の「遂行を共謀した者」を,5年以下もしくは2年以下の懲役または禁固に処するというものです。

 「共謀罪」においては、原則として実行行為者を処罰するという従来の刑事法体系の枠をはずし、犯罪の実行行為も,その準備行為も不要とされ、関係者の単なる「合意」だけでも処罰ができることとなり,内心の自由を侵害し,思想・表現に対する処罰に限りなく近くなります。
 しかも対象罪名は、長期4年以上とすれば約619に上り,重罪に対する例外措置というより,窃盗・詐欺や傷害など多数の刑事法犯について,未遂にさえ至っていない段階で,広範に「共謀罪」を科すことになります。 さらに,本来国連条約で求められているものはテロ組織など国際的な組織的犯罪集団の取り締まりであったにもかかわらず,この法案ではその限定がないので広く一般の政党,NPOなど市民団体,労働組合,企業等の活動も処罰されるおそれが出てきます。
 また「共謀罪」が導入されると,犯罪捜査においても,その謀議を探知するためにおのずと広範囲の盗聴やメールの傍受などが必要になり,取調においても謀議の内容を明らかにするため自白強要の傾向が強まり,人権侵害の頻発,警察が市民生活の隅々まで入り込む監視社会をもたらす危険も否定できません。

 このように,「共謀罪」の新設は,思想信条の自由など重要な基本的人権を侵害し,自白強要の取調方法が強まり,監視社会を招くなど,市民生活にとって重大な脅威になる恐れがありますので、市民の基本的人権を不当に制限することのないよう「共謀罪」法案の抜本的な見直しがなされることを強く求めます。


2005年12月7日
三重弁護士会
会長 降籏 道男