国選弁護制度の基礎報酬及び各種弁護費用の抜本的改善を求める会長声明

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2026年01月20日

国選弁護制度の基礎報酬及び各種弁護費用の抜本的改善を求める会長声明

 袴田事件、福井女子中学生殺人事件と、相次いで再審無罪判決が出された。また、プレサンス事件、大川原化工機事件など、冤罪事件は跡を絶たない。刑事弁護活動の重要性が改めて認識されている。

 2025年(令和7年)7月には、「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」の取りまとめ報告書が作成された。特に国選弁護に関していえば、近年では、9割近い被疑者が捜査段階において国選弁護人を選任し、ほぼ全ての事件において24時間以内に国選弁護人が指名されること等、その堅調な利用が確認された。

 当会もこれまで、国選弁護が被疑者・被告人の権利擁護のため、憲法上必須の制度であるとの認識の下、会独自の予算で、当番弁護士制度や謄写費用、当事者鑑定費用、取調べ立会いの援助制度、罪に問われた障害者等に対する刑事弁護費用等の援助制度等を創設し、時代の進展に合わせ高度化する刑事弁護活動を、市民が費用負担の心配なく享受できる体制の拡充に注力してきた。

 しかし、そもそもこれらの諸措置は、無罪推定の原則が憲法上保障される我が国において、本来全て国費によるべきものである。在り方協議会で取り上げられた多岐に亘る新たな刑事弁護活動を含めて、国費で賄われることを前提に、これを支える確固とした予算措置の議論が必要不可欠である。

 そして、かかる議論の中で、現行の国選弁護制度の基礎報酬及び各種弁護費用が極めて不十分であることの抜本的な解決も図られるべきである。

 すなわち、国選弁護事件の平均的な報酬は、捜査・公判段階(裁判員裁判対象事件を除く)共に事務所経営を維持しながら適正な弁護活動を行うために必要な対価としては非常に低額な状態が続いている。昨今の物価高すら反映されていない。この点、消費者物価指数(CPI)が2021年(令和3年)から現在にかけて10%程度上昇していることからすれば、実質的な国選弁護報酬が目減りしていることになる。すなわち、弁護活動に伴って通常支出される経費は基礎報酬で賄うものとされているところ、交通費(ガソリン代含む)、郵便代、紙代、光熱費といった諸経費が物価高の影響で高騰しているにもかかわらず、基礎報酬が据え置かれていることは問題である。さらに、弁護士による事務所経営には事務員等の人件費も要するが、法テラス設立時からみた大幅な最低賃金・平均賃金の上昇(さらには近時の物価高に合わせた賃上げ転嫁)に何ら対応していないことも問題である。現行の国選報酬が、制定以来約20年間、低廉な水準のままほとんど変わらず現在に至っていることは、昨今我が国が推し進める諸施策、すなわち、2024年(令和6年)11月に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」においては著しく低い報酬の額を不当に定めることが禁止され、内閣官房及び公正取引委員会による「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」では、労務費の適切な転嫁による適正な価格設定を求めていること、2025年(令和7年)6月13日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2025について」(いわゆる骨太の方針)において、賃上げや物価上昇に合わせて公定価格の引上げを省庁横断的に推進すると謳われたこと等の趣旨にも反するものであり、早急に、国選弁護報酬の抜本的な見直しが図られる必要がある。

 当会の実情としても、南北に長い地形を有し、刑事施設・留置施設が散在する当地においては、特に遠距離の移動を伴う事件の数が多く、その負担は甚大なものとなっているところ、現行の国選報酬基準は、国選弁護の負担に見合う報酬体系とは到底いえない。
また、近時、佐賀県警察科学捜査研究所の職員によるDNA鑑定で不正行為が発覚したが、本来、捜査機関側の鑑定の信用性を争うべき事案は多く、数々の冤罪事件でも弁護側の科学的鑑定が無罪主張の柱となってきた。しかし、現行の国選弁護費用体系では、当事者鑑定の費用をはじめ、本来行われるべき多くの弁護活動の費用が賄われず、極めて不公平なものとなっている。その結果、証拠開示が不十分な中で人質司法に抗し、冤罪防止や更生支援等に鋭意努めるべき国選弁護人の活動が相当制約されているのである。
そもそも、国選弁護業務のための予算は160億円前後と極めて僅少な額で推移している。膨張を続ける100兆円規模の国家予算に占める割合も年々低下しており、人権保障の経済的基盤の拡充は立ち遅れているという他ない。

 よって、当会は、被疑者・被告人の更なる権利擁護と公正な刑事司法制度実現のため、国会、法務省、財務省等に対し、国選弁護制度の基礎報酬及び各種弁護費用の抜本的改善を求める。

 

 2026年(令和8年)1月20日

                        三重弁護士会

                         会長 伊 賀   恵