死刑執行に抗議する会長声明

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2022年08月18日

死刑執行に抗議する会長声明

 

 2022年7月26日、東京拘置所において、死刑囚の死刑が執行された。死刑の執行は昨年12月以来で、岸田内閣では2回目である。同死刑囚は、2008年6月に東京・秋葉原で起きた無差別殺傷事件の犯人であり、7名の尊い生命を奪い、10名に重軽傷を負わせるという重大な結果を生じさせた。被害者及び遺族の感情に鑑みれば、いかなる理由があってもこのような犯行が許されるものではない。しかしながら、国家が死刑制度を存置し執行することが許されるのかという問題については、議論を止めてはいけない。

 死刑は人の生命を奪う不可逆的な刑罰であり、犯罪者といえども国がその生命を奪うことは、人権尊重の観点から許されない。また、死刑には、誤判の場合には取り返しがつかないという重大な問題がある。日本弁護士連合会は、死刑制度を存続させれば、死刑判決を下すか否かを人が判断する以上、えん罪による処刑を避けることができないこと等を理由に、2016年10月7日に開催された人権擁護大会において、日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであるとする宣言を採択した。

 国際社会においても、死刑廃止に向かう潮流が主流であり、世界の3分の2以上の国で、法律上又は事実上死刑が廃止されている。2020年12月16日、国連総会は、死刑廃止を視野に入れた死刑執行停止を求める決議案を賛成123か国、反対38か国の圧倒的多数決で採択した。国連は、日本政府に対し、死刑執行を停止し、死刑廃止を前向きに検討するべきであるとの勧告を出し続けている。それにもかかわらず、日本政府は、未だ死刑制度に関する情報を公開せず、国民的議論を進める取組すら行っていない。

 そこで、当会は、今回の死刑執行に抗議するとともに、政府に対し、死刑の執行を直ちに停止し、死刑に関する情報を広く国民に公開したうえで、代替刑の導入を含めた死刑制度の廃止に向けた全国民的議論を進めていく取組に着手することを求める。

   2022年(令和4年)8月17日

 

                       三重弁護士会

                        会長 長 尾 英 介