検察庁法一部改正案に反対する会長声明

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2020年06月17日

検察庁法一部改正案に反対する会長声明

 当会は、本年3月16日「東京高等検察庁検事長の定年延長閣議決定の撤回を求める会長声明」において、当該閣議決定は検察官の定年を63歳と定め、勤務延長を認めない検察庁法に違反するものとして撤回を求めているところであるが、今国会では、検察官の定年を63歳から65歳に段階的に引き上げたうえ、63歳に達した者は原則として次長検事、検事長、検事正等の役職に任命することができないという役職定年をもうけつつ、内閣や法務大臣が「職務の遂行上の特別の事情を勘案」して「公務の運営に著しい支障が生じる」と認めれば、63歳以降もこれらの役職を継続させることができるとする検察庁法の一部改正案(以下「検察庁法改正案」)が国家公務員法等の一部改正案と抱き合わせで審議されるに至っている。
 この検察庁法改正案は、幹部検察官の人事に対する内閣の政治介入を恒久化する機能を内包している点で検察官の政治からの独立性を侵害するものである。
 この点、かつて検事総長、最高検察庁検事などを務めた14名の元検察幹部も、本年5月15日に意見書を法務大臣宛に提出し、今回の検察庁法改正案に反対の意見表明を行っているが、その意見書において、今回の検察庁法改正案を、「内閣の裁量で次長検事及び検事長の定年延長が可能とする内容であり、前記の閣僚会議によって黒川検事長の定年延長を決定した違法な決議を後追いで容認しようとするものである。これまで政界と検察との両者間には検察官の人事に政治は介入しないという確立した慣例があり、その慣例がきちんと守られてきた。これは『検察を政治の影響から切りはなすための知恵』とされている(元検事総長伊藤榮樹著『だまされる検事』)。検察庁法は、組織の長に事故があるとき又は欠けたときに備えて臨時職務代行の制度(同法13条)を設けており、定年延長によって対応することは毫(ごう)も想定していなかったし、これからも同様であろうと思われる。今回の法改正は、検察の人事に政治権力が介入することを正当化し、政権の意に沿わない検察の動きを封じ込め、検察の力を殺(そ)ぐことを意図していると考えられる。」と厳しく指弾しているところである。
 今回の検察庁法改正案は、検察官の準司法的権能を削ぐ恐れがあると同時に今回の定年延長閣議決定に見られるような検察官人事への不当な政治介入が疑われるような事態が今後も繰り返される恐れがあるものであって、法案自体、検察の不偏不党、政治的中立性を損なう、制度的欠陥があると言わざるを得ない。
 政府は今国会での採択を予定していたものの、かような元検察幹部の反対意見、日本弁護士連合会及び全国の弁護士会の会長声明はもとより、国民世論の懸念を受けて既に決議の見送りを決めている。
 当会は、他の国家公務員の定年の引き上げや検察官の退官年齢を引き上げる改正案について見解を表明するものではないものの、内閣、法務大臣の政治的判断で役職定年や退官年齢を延長できるとする今般の検察庁法改正案については検察官の独立性を侵害する問題性は払しょくし難いものとして、次期国会での継続審議とすることなく、直ちに廃案とされるよう強く求める。

 

       令和2年(2020年)6月16日

 

                     三重弁護士会

                      会長 中 西 正 洋