組織的犯罪処罰法改正案に反対する再度の会長声明

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2017年06月14日

組織的犯罪処罰法改正案に反対する再度の会長声明

 本年5月23日、「テロ等組織犯罪準備罪」を創設する組織犯罪処罰法改正案(以下、「本法案」という。)が衆議院本会議で可決され、本法案は同月29日から参議院での審議が進められている。

 当会は、平成28年11月14日、本法案の国会提出に先立ち、「いわゆるテロ等組織犯罪準備罪の新設に反対する会長声明」を発出し、本法案は処罰範囲を大幅に限定しているとは評価できず、むしろ、「テロ」対策の名の下に、思想信条の自由、表現の自由、集会・結社の自由などの憲法上の基本的人権を侵害する危険性があると指摘した。

 ところが、本法案の審議においては、当会が前記会長声明で指摘した問題点は解消されていない。

 前記会長声明発出後に国会に提出された本法案では、適用対象を「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」と規定し、その定義を「団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が一定の重大犯罪を実行することにあるもの」とした。しかし、どのような団体が「結合関係の基礎としての共同の目的が一定の重大犯罪を実行することにあるもの」と認定されるかについては、衆議院での本法案の審議を経ても明らかになってはいない。

 たとえば、法務大臣は、衆議院本会議では、自然環境や景観の保護などを主張する団体はその目的からして組織的犯罪集団に当たることはなく、座り込みを計画しても、テロ等準備罪による処罰の対象となることはないと答弁した。しかし、法務大臣は、参議院本会議では、「対外的には環境保護や人権保護を標榜していても、それが隠れみので、結びつきの基本的な目的が重大な犯罪を実行することにある団体と認められる場合は処罰されうる」と答弁した。また、団体が組織的犯罪集団に該当するかどうかは、「捜査機関が刑事訴訟法の規定に従い収集した証拠に基づいて、社会通念に従って判断して認定する」と述べるに止まった。それどころか、「組織的犯罪集団だと確実に認められなくても、その嫌疑が客観的にある場合に捜査を開始できる」と答弁した。これは、捜査機関が「組織的犯罪集団に該当する嫌疑が客観的にある」と判断すれば、団体の本来の性質にかかわらずに捜査がなされる可能性を認めるものであって、恣意的な運用がなされる危険性も否定できない。

 対象犯罪についても、本法案では277にまで限定されるに至ったが、かかる限定範囲と、政府が従前から、国連越境組織犯罪防止条約締結のためには「懲役・禁錮4年以上の全ての罪」を対象として600を超える犯罪を対象とすることが不可欠である、と答弁してきたこととの整合性は不明なままである。

 そして、そのように限定された対象犯罪の中には、破産法上の偏頗行為や、森林法違反、著作権法違反、所得税法違反といった、テロ対策という目的とはおよそ無縁な犯罪が含まれており、また、必ずしも重大犯罪に限られているというわけでもない。

 よって、当会は、引き続き本法案に反対し、本法案を廃案にするよう求めるべく、あらためて声明を発する。

以上

 

 平成29(2017)年6月13日

 

三重弁護士会           

会長 飯 田   聡