弁護士報酬敗訴者負担制度問題に関する会長声明

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2004年07月28日

弁護士報酬敗訴者負担制度問題に関する会長声明

 政府は、訴訟上の「合意」による弁護士報酬敗訴者負担制度の導入を図ろうとして、平成16年3月2日、「民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案」を国会に上程し、会期終了により継続審議となったが、次期国会での審議が予定されている。

 司法制度改革審議会は平成13年6月、司法アクセスの促進をはかるべきとしつつ、他方で、弁護士報酬の敗訴者負担制度を導入すべきであるとした。その後同審議会の司法アクセスの検討会において、この制度の導入の当否について審議がなされてきた。

 これに対して、日本弁護士連合会及び当会は、弁護士報酬敗訴者負担制度は、経済的・社会的弱者にとっては裁判の利用を萎縮させるもので、司法アクセスを促進させるという司法改革の理念に反するとして、この制度の導入に強く反対してきた。また、当会は、平成15年9月24日「弁護士報酬敗訴者負担制度を乱訴の防止等を理由に一律に導入することは反対である」旨の会長声明を出した。

 ところが、司法アクセス検討会の最終段階において「原則各自負担」という従来の考え方を維持しながらも、唐突に、双方の当事者に訴訟代理人がついて共同の申立がなされた場合に限って敗訴者負担にするという「合意制」による敗訴者負担制度導入の意見が出された。

 前記の法案は、この「合意制」を内容とする敗訴者負担制度の導入である。

 しかし、敗訴者負担制度の弊害は、「合意制」によっても、何ら解消されない。訴訟上の合意によって敗訴者負担が可能となれば当事者間の裁判外の私的契約や約款などに「敗訴者負担条項」記載することによる実質的な敗訴者負担制度が広がっていくことが懸念される。このようになれば、消費者、労働者、中小企業零細業者等契約上弱い立場の人々は、敗訴者負担をおそれて訴訟を提起することも、受けて立つことも躊躇されることになり、かえって司法アクセスを萎縮させることになる。

 当会は、この敗訴者負担制度の導入は、たとえ「合意制」によるものとしても司法アクセスを阻害するという弊害を払拭することはできず、その導入を内容とする本法案には絶対に反対であり、廃案とすることを強く要求する。

①消費者訴訟、労働訴訟、一方が優越的地位にある事業者間の訴訟については、合意制」を適用しない。
②消費者契約、労働契約、一方が優越的地位にある事業者間の契約においては、私的契約上の敗訴者負担の定めは無効とすること。

以 上


2004年7月28日
三重弁護士会
会長 北岡 雅之