司法修習生の給費制維持を求める会長声明

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2003年10月27日

司法修習生の給費制維持を求める会長声明

 政府は、財政難を理由に司法修習生の給費制を廃止して貸与制に改めるとともに、裁判官や検察官に任官したものだけは返還を免除するという司法改革案を検討しているが、当会は、次の理由から、給費制の廃止に強く反対し、その堅持を求めるものである。

1.わが国の法曹養成は、戦後の約50年間余り、司法試験に合格した司法修習生を最高裁判所が管轄する司法研修所において統一的に研修させ、2回試験に合格した者を、裁判官、検察官、弁護士として法曹界に送りだすという制度を維持し、法の支配する公平で平等な社会の実現に向けて多くの成果をあげてきた。   司法研修所の役割は、質の高いリ-ガルマインドと法技術をもった有能な法曹を養成するために必要不可欠なものであリ、その重要性は、法科大学院が創設されたとしても変わらないと考える。
 司法修習生には、修習専念義務が化されており、アルバイトが禁止され、終日、密度の高い研修を受けているのであるから、これに対して生活保障をおこなうのは当然である。

2.わが国の法曹養成制度の優れた点は、その意欲と資質があるものは、誰でもが法曹を目指すことができ、その夢を実現できる点にあった。給費制を廃止することは、生活費の潤沢な富裕な階層のものしか法曹を目指すことができないという極めて不合理な制度となってしまう。

3.給費制を維持しているドイツや韓国においては、社会経済のグロ-バル化に対処すべく、国際感覚をもった法曹、とりわけ、弁護士の育成に精力を注いでいるところであるが、国際化する企業法務や人権問題への対処からしても、給費制の維持のもとに、国際感覚豊かな弁護士を養成することは、資源の乏しいわが国が、国際的にも高い社会経済的地位を保持していくために必要不可欠な制度である。

4.貸与制をとり、任官者にだけ返還を免除する方式は、司法修習生の間に差別を持ち込むものであるとともに、司法研修所を卒業した弁護士が、当番弁護士や国選弁護士として公益的奉仕活動を果たしていることを看過しており、また、本来、政府が整備すべき公的弁護制度が完備していない中で、みずから特別会費を支出して当番弁護士制度を維持していることなど、弁護士及び弁護士会の果たしてきた公益活動を無視する暴論である。

5.法科大学院の創設によって、3年間の授業料と生活費の負担が多額となるおそれがあるが、仮に、貸与制がひかれた場合には、法科大学院への入学から司法研修所を卒業するまでの4年間の支出は、約1500万円にのぼると試算されている。このような事態は、生活費の保障がないため、法曹を志望している有能な若者や社会経験の豊かな社会人を法曹界から放逐する事態となりかねない。
 これは、多様性のある社会のさまざまな階層から人的構成がなされるべき法曹界にとってゆゆしい問題であり、法の支配する成熟した社会の実現を目ざすうえでも、国民的損失であるといわねばならない。

よって、給費制の廃止に強く反対し、その堅持を求めるものである。

以 上


2003年10月27日
三重弁護士会
(平成15年度)会  長  村 田 正 人