刑事再審手続に関する法制審議会の答申に反対し、議員立法による再審法改正の実現を求める会長声明

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2026年02月18日

刑事再審手続に関する法制審議会の答申に反対し、議員立法による再審法改正の実現を求める会長声明

 法制審議会は、本年2月12日、諮問第129号に対する答申(刑事再審手続に関する要綱(骨子)。以下「要綱(骨子)」という。)を多数決で採択し、これを法務大臣に答申した。
しかし、要綱(骨子)の内容は、えん罪被害者を適切かつ迅速に救済するという再審法改正の目的に沿ったものではなく、今まで以上に救済を困難にしかねない内容を含んでいる。その主な問題点は、以下のとおりである。

 第1に、要綱(骨子)は、「再審の請求についての調査手続」を設け、調査の結果、「理由がないことが明らかである」と認めるときは、裁判所は直ちに再審請求を棄却しなければならないとしているが、この調査の段階では、証拠の提出命令や事実調べはできないこととされている点である。
過去の再審無罪事件を見ると、再審請求段階では、十分な新証拠はなかったが、後に新たに開示された証拠が新証拠となり、あるいは、開示された証拠がきっかけとなって新証拠が得られ、これにより再審開始・再審無罪に至る場合が多い。しかし、このような規定が設けられた場合、裁判所は証拠の提出命令を行うことが禁止されるため、再審請求人が無罪につながる証拠の開示を受けられないまま、書面審査のみで、速やかに再審請求が棄却されるおそれがある。

 第2に、要綱(骨子)は、証拠開示について、裁判所に証拠を提出する方法によるものとし、しかも、その対象を「その関連性の程度その他の当該再審の請求についての裁判をするために提出を受けることの必要性の程度並びにその提出を受けた場合に生じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮し、相当と認める」ものに限定している点である。
捜査機関のもとには通常審に提出されなかった証拠が多数存在し、その中には無罪方向の証拠も含まれることは、過去の再審無罪事件からも明らかであるが、そのような証拠に辿りつくためには、再審請求人や弁護人に必要な証拠が幅広く開示されなければならない。しかし、要綱(骨子)によれば、裁判所が再審請求の判断をするために必要かつ相当と認めて証拠の提出を命じない限り、再審請求人や弁護人は、捜査機関が保管する証拠を見ることもできない。これでは、無罪につながる証拠の発見は極めて困難である。
 しかも、要綱(骨子)は、開示証拠の目的外使用禁止についても定めている。このような規定が設けられた場合、例えば、新証拠獲得のために支援者の協力を得る際に、開示証拠についての情報を提供することさえも目的外使用との指摘を受ける懸念があり、その萎縮効果は極めて大きい。

 第3に、要綱(骨子)は、再審開始決定に対する検察官の不服申立てを禁止(廃止)していない点である。
 過去の再審無罪事件を見ると、検察官は、ほぼ全ての事件で機械的に不服申立てを行っている。しかも、福井事件の第1次再審請求では、検察官は、確定判決で有力な有罪根拠とされた証拠に矛盾する重要な証拠が存在することを知りながら、これを隠したまま再審開始決定に対して不服申立てを行い、その結果、再審開始決定が誤って取り消された。このような「公益の代表者」としてあるまじき検察官の対応によって、再審開始が確定するまでの期間が13年も長引く結果となっている。にもかかわらず、要綱(骨子)は、これまでどおり、再審開始決定に対して検察官が不服申立てを行うことを無制限に認めている。これでは、えん罪救済の長期化を免れない。

 第4に、要綱(骨子)は、再審開始決定に関与した裁判官を再審公判から除斥するとしている点である。
再審請求審と再審公判は一連の手続きであり、これまでの実務においても一つの事件(同一の事件番号)として扱われているのであるから、同一の裁判官が担当するのは当然である。
 再審開始決定に関与した裁判官が再審公判を担当できないということになれば、当然、その記録検討などを一から行うことになり、えん罪被害者の救済が遅れることは必至である。

 

 要綱(骨子)は、法制審議会刑事法(再審関係)部会の審議を経て作成されたものであるが、当会は、同部会の公正性、中立性に疑問があること、そして、その審議の進め方や内容にも深い懸念があることについて、本年1月20日に「法制審議会刑事法(再審関係)部会の審議の進め方に抗議し、議員立法による再審法改正の実現を求める会長声明」を発出し、すでに指摘しているところである。

 今回、同部会が作成した要綱(骨子)が、法制審議会総会において多数決で採択されたものの、会長を除く出席委員17名のうち4名が反対の意見を表明し、1名が棄権したのであり、このことは、要綱(骨子)の内容に重大な問題があることを端的に示している。

 

 再審法改正に関しては、「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」が「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」(以下「議連法案」という。)を取りまとめている。議連法案は、再審制度によってえん罪の被害者を適正かつ迅速に救済し、その基本的人権の保障を全うする観点から策定されたものであって、えん罪被害者の迅速かつ容易な救済を指向するものである。また、その内容を見ても、再審請求手続における検察官保管証拠等(送致書類等目録を含む。)の開示を幅広く認めるとともに、再審開始決定に対する検察官の不服申立てを全面的に禁止(廃止)している点などは、要綱(骨子)よりも優れており、高く評価できるものである。
 よって、当会は、上記のような問題点を含む要綱(骨子)に反対するとともに、再審法改正の中核をなす部分については、議員立法により、議連法案の内容に基づく改正が実現されることを強く求める。

 

 2026年(令和8年)2月17日

                        三重弁護士会

                         会長 伊 賀   恵