集団的自衛権の行使容認に反対する会長声明

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2014年01月18日

集団的自衛権の行使容認に反対する会長声明

1. 集団的自衛権とは、「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」である。従前、歴代政府は、憲法第9条の下において許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されないとしてきた。

2. 日本国憲法は、平和的生存権を確認し(憲法前文第2段)、戦争放棄、戦力不保持及び交戦権の否認を規定する(憲法第9条)など、徹底した恒久平和主義の理念を掲げている。戦争と武力紛争、そして暴力の応酬が絶えることのない今日の国際社会において、日本国民が全世界の国民とともに、恒久平和主義の理念に立脚し、平和的生存権の実現を目指す意義は極めて大きく、重要である。
 恒久平和主義の理念に立脚し、平和的生存権の実現を目指す意義に鑑みれば、自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであるとした従前の政府の憲法解釈は、現在もなお合理性を有している。

3. ところが現在、政府は従前の憲法解釈を変更して、集団的自衛権の行使を容認しようとしている。しかしながら、集団的自衛権の行使は、恒久平和主義の理念を定めた憲法前文、第9条に反する。
 また、集団的自衛権を行使することは憲法上許されないとする確立した憲法解釈は、憲法尊重擁護義務(憲法第99条)を課されている国務大臣や国会議員によってみだりに変更されるべきではない。さらに、確立した憲法解釈を変更することは、憲法に違反する政府の行為を無効とし(憲法第98条)、政府の行為が憲法に制約されることとした立憲主義に反するものであって、到底許されない。

4. よって、当会は、憲法の諸原理を尊重する立場から、政府が集団的自衛権の行使に関する確立した憲法解釈を変更して、集団的自衛権の行使を容認することに、強く反対する。


2014年5月14日
三重弁護士会
会長 板垣 謙太郎