改正少年法における特定少年の実名等の公表及び報道に関する会長声明

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2022年11月10日

改正少年法における特定少年の実名等の公表及び報道に関する会長声明

 2021年5月21日、「少年法等の一部を改正する法律」(以下「改正少年法」という。)が可決成立し、本年4月1日に施行された。改正少年法は18歳または19歳の少年を「特定少年」と定義したうえで、同法第68条は、特定少年のときに犯した犯罪について公判請求された場合に、少年の氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等により当該事件の本人であることを推知することができるような報道(以下「推知報道」という。)の禁止を解除した。

 そして、本年11月2日、津地検は、特定少年についての実名を初めて公表し、一部の報道機関が、実名を含む推知報道を行った。

 改正少年法の推知報道の禁止の一部解除に対しては、当会は、2021年2月26日付「少年法適用年齢に関する法制審議会の答申に基づく少年法改正案に反対する会長声明」において反対の立場を表明しているところである。

 改正少年法においても、特定少年は少年法の適用を受ける少年であり、少年法の健全育成の趣旨が妥当し、更生の機会は十分に与えられる必要があることにかわりはない。いったん少年の実名等が公表され報道がなされると、インターネットが普及した現代社会においては瞬く間に広がり、半永久的に閲覧が可能となり、将来にわたって少年の更生の阻害となるおそれが極めて強い。衆参両院においても、「特定少年のとき犯した罪についての事件広報に当たっては、事案の内容や報道の公共性の程度には様々なものがあることや、インターネットでの掲載により当該情報が半永久的に閲覧可能となることをも踏まえ、いわゆる推知報道の禁止が一部解除されたことが、特定少年の健全育成及び更生の妨げとならないよう十分配慮されなければならない」との附帯決議がされている。

 推知報道の禁止が及ばないということが、少年の推知事項を公表、報道すべきということに結び付くものでは決してない。今回の事案においても、津地検の実名公表があったにもかかわらず、事件の内容や少年法の理念などを踏まえて、報道機関としての主体的な判断により実名報道を行わなかった報道機関が見られたことは、高く評価される。

 特定少年の健全育成及び更生の機会を保障するため、検察庁に対しては、改正少年法の下での実名公表について控えること、報道機関に対しては、検察庁が特定少年の実名を公表するか否かにかかわらず推知報道を控えることを、強く求める。



   2022年(令和4年)11月10日

 

                       三重弁護士会

                        会長 長 尾 英 介